東京地方裁判所 平成10年(ワ)2438号 判決 1999年9月16日
反訴原告
藤城一男
反訴被告
岡部操子
主文
一 反訴被告は、反訴原告に対し、金一九〇万〇七九九円及びこれに対する平成八年一〇月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 反訴原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、五分の二を反訴被告の負担とし、その余を反訴原告の負担とする。
四 この判決は、第一項について、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
反訴被告は、反訴原告に対し、金四六一万八九〇〇円及びこれに対する平成八年一〇月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、信号機による交通整理の行われていない交差点において、自動車が出会頭に衝突した交通事故について、優先道路を走行していた自動車の運転者が、相手方の運転者に対し、民法七〇九条に基づき損害賠償を求めた事案である。
一 前提となる事実(証拠を掲げない事実は争いがない。)
1 事故の発生
次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
(一) 発生日時 平成六年二月二五日午後二時〇五分ころ
(二) 事故現場 茨城県鹿島郡神栖町奥野谷四九九番地一先の信号機の設置されていない交差点
(三) 事故車両 反訴被告が運転していた普通乗用自動車(水戸五七や一七七八、以下「岡部車両」という。)と、反訴原告が運転していた普通乗用自動車(水戸五七や一六二一、以下「藤城車両」という。)
(四) 事故態様 事故現場において、優先道路を走行していた藤城車両と、岡部車両が出会頭に衝突した。
2 責任原因
反訴被告には、本件事故を発生させた過失があるので、民法七〇九条に基づき、反訴原告に生じた損害を賠償する責任がある。
二 争点
1 事故態様における過失相殺
2 入院及び個室利用の必要性、治療期間の相当性
3 シートベルト未着用と過失相殺の有無
4 反訴原告の損害額
第三争点に対する判断
一 事故態様における過失相殺(争点1)
1 前提となる事実及び証拠(甲四、乙四の1~21、五の1~15、六の1~22、八[一部]、反訴原告本人[一部])によれば、次の事実が認められる。
(一) 事故現場は、神栖町知手方面(南方向)から神栖町溝口方面(北方向)に向かって南北に走る平坦なアスファルト道路(以下「南北道路」という。)と、国道一二四号線方面(東方向)から神栖町萩原方面(西方向)に向かって東西に走る平坦なアスファルト道路(以下「東西道路」という。)が交差する、畑地の中の信号機による交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)である。
南北道路は、車道幅員が三・九メートルから四・五メートルであり、両脇には幅員〇・七メートルの路側帯がある。本件交差点の南側部分は、その北側と比較して、やや西側にずれて本件交差点と交わっている。東西道路は、車道幅員が五・八メートルであり、〇・五メートルほどの路側帯がある(ただし、本件交差点の西側においては、東西道路の北側にしか路側帯はない。)。東西道路には、中央線が引かれており それは本件交差点内を通っている。
本件交差点の各角には、いずれもガードレールが設置されており、北西角と東南角には、いずれもカーブミラーが設置されている。また、本件交差点西側の東西道路の南側には、道路に沿って幅員一メートルの側溝が存在している。
南北道路を北方向から、東西道路を東方向から、本件交差点に向かって進行した場合、見通しは良好ではあるが、本件交差点から北東の畑地の中に廃棄物処理用の建物(以下「手前建物」という。)が存在し、その建物の南北に生け垣が存在するため、これらによって、見通しが遮られる区間がある。
(二) 反訴原告は、藤城車両を運転し、東西道路を国道一二四号線方面から本件交差点に向かって走行していた。他方、反訴被告は、岡部車両を運転し、南北道路を神栖町溝口方面から本件交差点に向かって走行していた。
反訴原告は、本件交差点の相当程度手前において、手前建物の北側に、南北道路を本件交差点に向かって走行してくる岡部車両に気がついた。ところが、東西道路の方が優先道路であることなどから岡部車両が一時停止するであろうと考え、対向車や南北道路を神栖町知手方面から走行してくる車両に注意しながら本件交差点に進入した。
反訴被告は、本件交差点の四〇メートルほど手前で本件交差点を認め、東西道路を神栖町萩原方面から国道一二四号線方面に向かって本件交差点を通過する車両を認めた。そして、そのまま走行して本件交差点に進入した。
そして、藤城車両の右前角部が岡部車両の左前側部と衝突した。その結果、藤城車両は、その前部を、本件交差点内の南西角付近に向けて停止し、岡部車両は、向きを変えて東西道路を神栖町萩原方面に約二二メートルほど走行し、東西道路脇の側溝に脱輪して停車した。
以上のとおり認めることができ、乙八及び反訴原告本人の供述中右認定に反する部分は、前掲各証拠と対比してたやすく採用できない。
2 この認定事実によれば、反訴被告は、優先道路と交差する交差点に進入するに際し、交差道路の状況を十分確認することなく、漫然と交差点に進入した重大な過失がある。他方、反訴原告も、優先道路を走行していたとはいえ、交差道路を走行してくる岡部車両を認識しながら、それが本件交差点手前で停止するものと安易に信頼し、岡部車両のその後の走行状況をまったく確認することなく本件交差点に進入した過失がある。
この過失の内容及び程度、本件事故の態様等の事情を総合すると、本件事故に寄与した反訴原告の過失割合は一割とするのが相当である。
これに対し、反訴原告は、優先道路を走行する車両の運転者は、交差道路から交差点に進入しようとする車両が適正な運転をするであろうと信頼して走行することが許容されるから、反訴原告には交差道路の車両の動静を注視する義務はなく、過失はないと主張する。
しかし、道路交通法上、優先道路を走行する車両運転者に、徐行義務が免除される旨の規定(同法四二条一号)が存在するのに対し、交差道路を通行する車両等に対する注意義務は免除されていない(同法三六条四項)。したがって、交差道路から交差点に進入しようとする車両が適正な運転をするであろうと信頼して走行することが許容されるとまではいえない。
そうすると、交差道路の車両の動静を注視する義務はあるというべきであるから、反訴原告の主張は採用できない。
二 入院及び個室利用の必要性、治療期間の相当性(争点2)
1 証拠(甲二の1・2、三の1・2、七の1~5、乙一の1・2、五の1~15、八、調査嘱託の結果、反訴原告本人[一部])によれば、次の事実が認められる。
(一) 本件事故により、藤城車両の前部及び右前側部は、大きく凹損し、反訴原告は、本件事故当日である平成六年二月二五日、茨城県鹿島郡神栖町所在の社会福祉法人白十字会自十字総合病院に搬送された。事故当時、シートベルトをしておらず、頭部に外傷を負って多量に出血していたため、経過観察のために入院となった。この時点では、創部のチリチリ感と左第一指第二関節部痛を訴えており、脳震盪症、全身打撲、頭皮挫創の診断を受けた。
反訴原告には、左頭頂部から左前額部にかけて約二〇センチメートルの裂傷があり、縫合治療を受けた後の経過は良好であり、同年三月二日には抜糸をした。このころは、右肩痛や腰部痛を訴えたりはしたが、頭痛や吐き気はなかった。そして、同年三月七日には、医師からいつでも退院することができると説明され、同年三月一〇日に退院した。
(二) しかし、反訴原告は、頭痛や、右肩から頸部の痛みを訴え、平成八年三月一一日、翌一二日と続けて白十字総合病院で通院治療を受けた。そして、自宅にいても、子供が幼くて安静できないなどの事情があり、茨城県鹿島郡鹿島町所在の額賀整形外科医院への入院を希望した。そこで、白十字総合病院に紹介状を作成してもらい、同年三月一四日、右肩痛、左拇指の屈曲時痛、右膝痛、左前頭部からこめかみの疼痛、腰痛などを訴え、額賀整形外科医院に入院した。この入院は、反訴原告が希望したものであったが、額賀整形外科医院の医師も、診察をした結果、心身の安静を保ちつつ治療に専念する必要があると判断してこれを許可した。
反訴原告は、頭部外傷、全身打撲など心身の安静を必要とするために個室が適当であるとの医師の判断により、同年六月一五日まで九四日間にわたり個室において入院治療を受けた。この間、腰痛以外の症状は次第に緩解してきたが、腰痛は、当初、朝起きられないほどの痛みが持続し、退院時も残存した。また、入院中に、白十字総合病院に六日通院して診察を受け、また、医師の許可の下、自宅に戻って外泊をしたことが何度かあった。
その後、額賀整形外科医院に、平成六年六月に一一日、同年七月に二〇日、同年八月に一九日、同年九月に二〇日、同年一〇月に一六日、同年一一月に一七日、同年一二月に一七日、平成七年一月に一九日、同年二月に一五日、同年三月に一六日、同年四月に一五日、同年五月に一七日、同年六月に一八日、同年七月に一六日、同年八月に一四日、同年九月に一二日、同年一〇月に一三日、同年一一月に一一日、同年一二月に一一日、平成八年一月に九日、同年二月に一〇日、同年三月に一三日、同年四月に一二日同年五月に一一日、同年六月に一一日、同年七月に九日、同年八月に七日、同年九月に六日、同年一〇月に五日通院し、湿布、電気治療、骨盤牽引による治療を受けた。
なお、反訴原告の頭部には、裂傷が治癒した傷痕が、線条痕として残存しており、左額部において、頭髪の生え際から眉毛のやや上部までの数センチメートルが視認できる痕になっている。
(三) 反訴原告の腰痛は自覚症状のみであり、他覚的所見はない。しかし、額賀整形外科医院の院長である額賀幸一医師は、腰部の場合、脊椎が中心にあり、椎体、椎間板、椎間関節、靭帯、脊髄神経、自律神経(交感神経)、傍脊柱筋、筋膜、血管系などで構成され、知覚終末の分布も複雑であるうえ、動的状態で上半身を支え、常時筋緊張を強いられる部位であるので、外傷機転が加わった場合、疼痛は、捻挫の考えだけでは説明できない状態が起こり、一旦慢性化した場合は、解決に長期間を要する事態もあり得ると説明している。
なお、反訴原告は、約三〇年ほど前に、自転車に乗っていてダンプカーに跳ねられて入院し、腰部を負傷して動くことができなかったことがある。
以上のとおり、認めることができ、反訴原告本人の供述中、右の認定に反する部分は、前掲各証拠に照らしてただちには採用できない。
2(一) 反訴被告は、額賀整形外科医院における治療に、個室利用を含めて入院の必要性はないと主張する。
右の認定事実によれば、確かに、反訴原告は、白十字総合病院で退院可能となって退院しており、額賀整形外科医院での入院治療は、反訴原告が求めたものではある。しかし、額賀整形外科医院においては、当初、軽微なものとはいえなかった頭部の外傷が回復してきたせいか、腰痛に関する主訴や治療が主体となってきたもので、白十字総合病院における治療とは、主たる治療の対象が異なってきている。また、額賀整形外科医院で訴えていた腰部の症状は、必ずしも軽微とまではいえず、車両の損傷状態から事故の衝撃が相当程度に大きかったものと推測されることからすると、それは不自然なものとはいえず、安静の必要が大きかったことも理解できるところである。そして、額賀整形外科医院での入院治療は、医師もその必要性を認めたものである上、個室利用を含めた入院治療の必要性は、治療方法に関するもので、ある程度医師の裁量が大きくならざるを得ないことを併せて考えると、額賀整形外科医院において、個室において入院治療がなされたことが不相当であったとまではいえない。
したがって、額賀整形外科医院における個室利用による入院治療も本件事故と相当因果関係があるというべきである。
(二) また、反訴被告は、本件事故に基づく負傷に対する治療として必要な期間は、事故後三か月程度に止まると主張する。
しかし、反訴原告は、事故後三か月経過した時点においては、なお、腰痛を中心とした症状で入院治療を行っていたものであり、その後も治療の必要性があったというべきであるし、現に、反訴被告も、事故後二年以上にわたって治療費の支払をしている(甲六)。たしかに、反訴原告に対する治療内容にほとんど変化はなく、自覚症状のみであるにしては、治療が長くなっていたことは否定できない。しかし、腰痛が比較的頑固なものであったことや、通院頻度が高いことに照らすと、治療の必要性がなくなったということもできないから、平成八年六月ころから通院頻度が下がってきていることに照らし、同年五月までの治療は、本件事故と相当因果関係があるというべきである。
もっとも、反訴原告は、約三〇年前の交通事故で腰部を負傷しており、これが、本件事故による症状に影響を与えている可能性も考えられる。しかし、本件事故との間隔が開きすぎていることに加え、既往症が残存していると認めるに足りる証拠もないので、この事故の影響を考慮することまではできない。
三 シートベルト未着用と過失相殺の有無(争点3)
反訴被告は、反訴原告がシートベルトを装着していれば、顔面や頭部をフロントガラスに突っ込んで頭部外傷等の負傷をすることはなかったので、シートベルト不装着を過失相殺として考慮すべきであると主張する。
しかし、反訴原告が、車内のどこで裂傷を負ったのかは、本件全証拠によっても、必ずしも明らかではない(乙五の1~4、6によれば、藤城車両のフロントガラス及び運転席側の窓ガラスはいずれも破損していないことが認められる。)。したがって、少なくとも、頭部外傷については、シートベルトを装着していれば、負傷を負うことがなかったとか、負傷程度をもう少し軽微なものにできたとまでいえるかは必ずしも明らかでない。また、治療の遷延化の原因である腰痛については、シートベルトの装着により、これを防ぐことができたと認めるに足りる証拠はない。そして、反訴原告が、入院していたのは、頭部外傷を負ったことのみが原因ではないことをも併せて考えると、シートベルトの不装着は、治療内容や期間に大きく影響を与えるほどのものであったとまではいえない。
したがって、シートベルトの不装着を過失相殺として考慮することは相当でないというべきである。
四 反訴原告の損害額(争点4)
1 治療費(請求額なし) 一二七万五九八〇円
反訴被告は、事故直後から平成八年五月までの治療費等として、白十字総合病院、額賀整形外科医院及びさくら調剤薬局に対し、合計九六万〇四六〇円を支払った(ただし、額賀整形外科医院における同年五月一日から同年五月三一日までの入院治療費を除く。甲六、弁論の全趣旨)。また、反訴原告は、白十字総合病院に対し、治療費あるいは文書料の残額として五〇〇〇円、額賀整形外科医院に対し、平成八年五月分の治療費として三一万〇五二〇円を支払った(乙一〇、一一、弁論の全趣旨)。
したがって、平成八年五月までの治療費総額(文書料、薬代を含む。)は、一二七万五九八〇円となる。
なお、反訴原告は治療費の請求をしていないが、過失相殺の前提として、損害総額を算出するため、ここに掲げる(以下、反訴原告が請求をしていないものについては、同様の理由により損害として掲げる。)。
2 入院雑費(請求額なし) 一四万〇四〇〇円
入院雑費としては、一日あたり一三〇〇円の一〇八日分で、一四万〇四〇〇円を相当と認める。
3 入院衣類(請求額なし) 認められない
反訴原告は、入院衣類(パジャマ、下着)として、一万〇七七三円を負担したと主張するが、これは入院雑費に含まれるというべきである。
したがって、入院雑費とは別に、入院衣類の費用は損害として認められない。
4 通院交通費(請求額なし) 二一万五四〇〇円
反訴原告は、白十字総合病院及び額賀整形外科医院への通院は自家用車で行っていた(弁論の全趣旨)。そして、反訴原告の住所地及びそれぞれの病院の所在地からすると、ガソリン代として、平均一日あたり六〇〇円の限度で本件事故と相当因果関係を認めるのが相当である。
反訴原告の平成八年五月までの通院実日数は三五八日(白十字総合病院の六日と、額賀整形外科医院の三五二日を加えた額)であり、白十字総合病院の退院時と額賀整形外科医院の入退院時の一・五日分(本件全証拠によっても、額賀整形外科病院に入院中に白十字総合病院に通院したときと、各病院の入退院時の交通手段は明らかではないので、ガソリン代の限度でこれを認める[唯一、甲二の2、乙一四の1の1・2によれば、平成六年三月二三日、額賀整形外科医院に入院中、白十字総合病院に通院した際にはタクシーを利用したことが認められるが、他の日に用いた手段は明らかでないので、便宜上、平均してガソリン代の限度で認めることとした。]。)を加えると、三五九・五日になるので、通院交通費としては、一日あたり六〇〇円の三五九・五日分で二一万五四〇〇円を認めるのが相当である。
なお、反訴原告は、入院中に外泊をした際にタクシーを使用したとして、合計一九万九五八〇円を負担したと主張する。しかし、医師の許可があったとはいえ、外泊はしなければならないものではないから、このために負担した費用は、本件事故と相当因果関係があるとはいえない。
5 着衣等損傷代(請求額なし) 慰謝料で考慮する
反訴原告は、本件事故により着衣が損傷したとして、六万〇一〇〇円の損害を被ったと主張する。
しかし、着衣の時価を正確に算定することは困難であるから、慰謝料で考慮することにする。
6 休業損害(請求額一九七万八九〇〇円) 五四万七三九七円
反訴原告は、本件事故に遭わなければ、少なくとも、賃金センサス平成四年第一巻第一表産業計・学歴計・男子労働者四〇歳から四四歳の平均賃金である六四七万六四〇〇円を下らない収入を得ることができたとして、平成六年二月二五日から、額賀整形外科病院を退院した同年六月一五日までの間に、休業により一九七万八九〇〇円の得べかりし利益を得ることができなかったと主張する。
しかし、証拠(反訴原告本人[一部])及び弁論の全趣旨によれば、反訴原告は、ゲーム機などの修理、大工や造園の人の手配などの仕事をしており、平成五年の収入は雑所得として年間一八〇万円にとどまっていたことが認められるから、本件事故に遭わなかったとしても、これ以上の収入を得ることができたとは認めるに足りないというべきである。
もっとも、反訴原告は、本件事故当時、役場には二四〇万円ほどの収入と申告しており、現実には、平均して月額三五万円から四〇万円の収入があったと供述する(原告本人)が、それを裏付ける証拠はなく、ただちには採用できない。
そして、既に認定した入通院の経過に照らすと、反訴原告は、平成六年二月二五日から同年六月一五日までの一一一日間の大半を入院していたのであるから、この間については一〇〇パーセント休業の必要があったということができる。
したがって、年間一八〇万円を基礎収入とし、一一一日間の休業損害を算定すると、五四万七三九七円(一円未満切り捨て)となる。
1,800,000×111/365=547,397
7 慰謝料(請求額二六四万円) 二〇〇万円
本件事故の態様、反訴原告の負傷内容、治療経過、額部に残存した傷痕(本件全証拠によっても、日常露出している傷痕の長さは明らかでなく、その形状及び大きさに照らすと、自賠法施行令別表二条の後遺障害等級第一四級一一号にはあたらないというべきである。)、着衣等を損傷したこと、シートベルトを装着していなかったことが頭部の負傷程度にまったく影響を与えなかったとはいえないこと等一切の事情を考慮すると、慰謝料としては二〇〇万円を相当と認める。
8 過失相殺及び損害のてん補
1、2、4、6、7の損害合計額四一七万九一七七円から、反訴原告の過失割合である一割に相当する額を控除すると、三七六万一二五九円(一円未満切り捨て)となる。
反訴被告は、反訴原告に対し、既払金として一八六万〇四六〇円を支払っているから(甲六、弁論の全趣旨)を差し引くと、損害残額は、一九〇万〇七九九円となる。
第四結論
以上によれば、原告の請求は、不法行為に基づく損害金として一九〇万〇七九九円及びこれに対する平成八年一〇月一六日(不法行為の日以降の日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 山崎秀尚)